この度、本センター研究員 春日美由紀と共同研究者である平野智紀氏が、9月から11月にかけて、「大地の芸術祭」のスタッフ向けに、対話型鑑賞のファシリテーションの考え方について伝える研修を行いました。
「大地の芸術祭 対話型鑑賞プログラム」と題した本プログラムでは、研修の全体デザインとレクチャー部分を平野氏が、対話型鑑賞のデモンストレーションやワークショップを春日が担当し、ファシリテーション実践の指導は2名で分担して行いました。
本プログラムのレポートを平野氏にご執筆いただきました。
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本研修の受講者は、美術館職員やツアーガイドをされている方、外部サポーター、ボランティアスタッフ等、日頃から様々な立場で「大地の芸術祭」の展示作品に関わっています。受講者の「何年間も観続けてきた作品が、違う表情を持ち始めたとき、興奮に近い感覚を覚えました。」という感想からは、作品が変わったわけではなく、鑑賞者の意識や見方が変容した=鑑賞者として成長した姿がうかがえます。
私たちがめざす対話型鑑賞は「よき鑑賞者=よきファシリテーター」※です。アート作品がただの「モノ」ではなく、作品として意味を生成するためには鑑賞者が欠かせません。よき鑑賞者として成長した受講者は、「大地の芸術祭」の作品と鑑賞者を繋ぐよきファシリテーターとして関わっていくことができる手ごたえを感じています。
※「よき鑑賞者=よきファシリテーター」
本センターが対話型鑑賞の実施者を目指す方を対象とした研修・講義をする場合、まず「鑑賞(みること)」のトレーニングから始めます。なぜなら「鑑賞者が今何を考えているか」を分からないままファシリテーション技術のみ鍛えることは不可能であると考えているからです。一見遠回りのようですが、鑑賞者としての経験を積むことで、各々がファシリテーターをする際に、自身が感じたような「作品を深く味わった」という実感を鑑賞者に感じてもらうにはどうすれば良いかを考えることができるようになるのです。