▷イベント詳細はこちら
福岡市文化芸術振興財団が企画する「アートを介した対話プログラム」に本センターの伊達と春日が登壇した。
春日は10月17日(日)に福岡アジア美術館の収蔵作品での対話型鑑賞会「そうぞうとコミュニケーションを楽しむ対話型鑑賞」を、伊達はオンラインで「ケア×対話型鑑賞」を10月31日(日)に開催した。
春日の対話型鑑賞会はアートには興味があるが「対話型鑑賞」は初めてという方がほとんどだった。鑑賞作品はアジア美術館が収蔵しているもので、鑑賞会後に美術館で実際に作品が鑑賞できるものの中から選んだ。(鑑賞の際は展示室とは別室で作品の写真をスクリーンに投影して行った)初めての方向けに描かれているものが分かりやすく、ストーリーの浮かぶものを選んだ。2作品を鑑賞するという設定だったので、描かれているもの(要素)の多いものから少ないものへと移行する流れで行った。
鑑賞後のアンケート結果と、参加者の感想を以下に記す。(※回答者は15名)
Q2)参加の前後で美術鑑賞についてのご自身の考えに変化はありましたか?
①変わった 15名 全員
変わったと答えた方の理由
・1作品40分間という長い(?)時間、みんなで楽しく鑑賞できるんだなあと驚きました。
・他の方の意見を聞き、その体験を追体験することを通して鑑賞が深まる自分がいた。
・皆さんの話を聞いて、今まで観ていた絵がちっぽけにみえ、深い絵の見方が出来ました。
・人の数だけ、見方や感じ方が違い、その違いがとても新鮮で、嬉しい驚きが多々ありました。
・多くの方と一緒にコミュニケーションを交わしながら作品を鑑賞することがなかったので今回本当に様々な言葉を聴いて、たくさんそうぞうすることが出来ました。
・同じ作品をたくさんの方々と一緒に共有することにより偏った自分の考えが解きほぐされる感覚がありました。理性と感情と、どちらもバランスよく使い分けるなどしながらだと何倍も作品が楽しめることに気づけました。
・他の方の鑑賞の視点も頂いたことは、自分の視野も広がり、よい機会となりました。
・より深く絵を見ることが出来るようになりました。視野が広がりました。
・他の方が話しているのを聴きながら考える方が美術をより楽しめると思いました。
・美術鑑賞をすること自体縁がない生活をしてきた自身にとっては、対話しながら時間をかけて観ることでしか、中々、気づきや細部まで観るということは難しいと感じました。
・自分の「そうぞう」が「コミュニケーション」することによって様々に変化する楽しさを実感しました。アートの解釈は1つではない。だからこそ大きな可能性を秘めていると感じました。
・ナビゲーターによってこんなに深く感じることが出来るのか。ナビゲーターの力量を考えさせられた。
※「ナビゲーター」は、対話型鑑賞のファシリテーターと同じ役割
Q3) 本日の感想
・このようなコミュニティーは初めて参加したのですが、大変楽しかったです。また参加したいです。
・他の方の感想をお聞きしていく中で、自分の感じ方が変化していく様が楽しかったです。
・本当に楽しかったです。他の方の絵に対する表現・言葉が様々で、改めて人は自分の言葉の中で生きているのだなと感じました。
・作品の見方が今後変わるだろうと強く思います。様々な視点からモノを見ていきたいです。
・ひとつの作品について長時間考える機会はなかなかないので、濃密で充実した時間でした。とても楽しかったです。
・今まで1つの絵を1時間も鑑賞したことはありませんでした。自分は2枚目の絵の時に「前の絵の印象が残っている」と感じなかったので、その感性に驚きました。2つの作品につながりを持たせて鑑賞すると面白い。
・対話型鑑賞会に初参加でした。コミュニケーションによってアートを鑑賞する目が開眼する過程を知ることが出来ました。
・「なぜ?」「どうして?」と思い巡らせながら観るという体験は楽しさを感じました。初心者にとっては、色んな見方や着眼点を知ることが出来て、アートに対する見方と楽しさを理解することが出来ました。
・「アートは人が鑑賞して初めてアートになる」と言われたことが「その通りだな」と感じました。深く見ることで絵の中に入り込む自分に気づきました。
・今回のシリーズに参加させていただき、個人的にも対話型鑑賞に魅力を感じ、他のイベントにも参加するようになりました。今後もこのような取組を楽しみにお待ちしております。
・はじめてお会いする人、どこの方かも知らない方と、あっという間に打ちとけることができる素晴らしい体験ができた。
・今回はとても刺激をうけました。ナビゲーターの先生と鑑賞者の話がとてもかみ合って深い鑑賞会でした。
・ナビゲーターとしての先生の言葉のかけ方がとても参考になりました。発言した人をとても認めてくれて、つぎへつぎへつなげていくことなど。私も美術館でガイドボランティアをしているので、今日の鑑賞体験を生かしていきたいと思います。
・人数が多く、積極的な方が多いので発言には至らない状況でした。2枚目の作品が実は怖い印象があって、白いところが爆発で牛がよろけているように見えたからです。ほかの方の発言に言いだしづらい雰囲気があり、ちょっとのまれてしまう感覚も怖かったです。あまりそういう体験はないため、びっくりしましたが、自分がそういうのが苦手なんだとわかったことがよかったと思い、最後の2枚目の印象も変わりました。
鑑賞会では多くの方が積極的に次から次へと挙手して発言された。その様子に気後れされた方もいらっしゃった。なるべくすべての方に発言していただこうと気を配りながら進めていったのだが、発言の機会を逃された方がいたことは申し訳なく感じる。誰もが安心して語れる場の雰囲気をもう少し醸成できるとよかったと反省。
一方で、大多数の方は対話型鑑賞の楽しさや作品鑑賞への新たなアプローチを体験され、今後の自身のアートへの関り方に変化が起こりそうな記述も見られ、対面での鑑賞会が実施できたことをうれしく思う。
今回は本センターが開発したACOPという対話型鑑賞法で実施した。ACOPにおけるファシリテーターはコミュニケーションをより活発に、そして深いものにするために、鑑賞者から出た言葉の言わんとするところまで耳を傾ける。さらに、鑑賞者の発言を「皆ちがって皆いい」で終わらせるのではなく、類似している/相反している意見に共通する問いを見出し、そこからさらに考えられることを皆で深堀りする。
かつて本学アートプロデュース学科でACOPを学んだ学生が「一人でみたら絶対に辿り着けないところまで、みんなでみたら行くことが出来る」と語ったように、ACOPでの鑑賞だからこそ、参加者もみんなでみていくことによって「みえなかったものがみえてくる」ような体験ができたのだと思う。この体験こそがACOPによる鑑賞の醍醐味だ。この醍醐味が提供できたことをうれしく思う。
最後に、鑑賞会終了後にアジア美術館で実際に作品をみてみたときの感想も知りたく思った。
今回このような機会を与えてくださった福岡市文化芸術振興財団様と福岡アジア美術館様に感謝して活動報告としたい。
【鑑賞作品】
「英雄だったかもしれない5」作者:シシル・バッタチャルジー(バングラデシュ)
「共同作業」作者:ヨン・ムンセン(楊曼生、マレーシア)
2021,12,1
京都芸術大学アート・コミュニケーション研究センター 春日美由紀