一般財団法人おおさか創造千島財団が運営するMASK(MEGA ART STORAGE KITAKAGAYA)は、大阪・北加賀屋の元鋼材加工工場・倉庫を活用した大型現代アート作品の収蔵庫です。本スペースでは年に一度、展覧会 「Open Storage」が開催され、保管する複数の作品を一般公開しています。
本学アートプロデュース学科およびアートコミュニケーション研究センターは、2015年度より本展覧会において「みる・考える・はなす・きく」を主軸とした作品鑑賞プログラムを監修しています。5年目となる本年も小学校低学年/高学年/中学生以上を対象に、それぞれ鑑賞ツアーを行いました。
小学校低学年/高学年のツアーでは、ヤノベケンジの作品《ジャイアント・トらやん》と仲良くなるための “おともだちシート” をつくるワークを実施。色や形をじっくりと観察するところからスタートし、それらの要素を元にジャイアント・トらやんの性格や特技を想像し参加者同士で話し合いました。
高学年はその後、同じくヤノベケンジによる《サンチャイルド》の鑑賞を。服装や表情から「何をしているんだろう?」「どんな気持ち?」など、いくつもの問いについて話し、考えてくれました。近づいたり離れたりしながら、大きな作品を一生懸命みようとする子ども達の姿が印象的でした。
中学生以上のツアーでは、宇治野宗輝による《THE BALLAD OF EXTENDED BACKYARD, THE HOUSE》と金氏徹平による《White Discharge(公園)》の二作品を鑑賞しました。以下に、参加者の声の一部をご紹介します。
『一人でみていると気付かないことがたくさんありました』
『人の意見や考えや見方をきいていると、自分の中でのイメージが変わっていく』
『いろんな経験や生活、くらしによって様々な意見が出て、楽しかった。刺激になった』
『感想をひねり出す中で、自分の思考パターンが出るんだなあと実感しました』
これら二作品の鑑賞では、「楽し気」と感じる人がいれば「不安や混乱」を感じる人もいるなど、対比的な意見が出てくる場面が何度もみられました。そのような対話の場を通じて、作品だけでなく自分自身や他の参加者といった「人」をみつめる眼差しが生まれていたこともまた興味深く感じています。
同時に、『同調する人が多ければ(意見が)そちらに傾いていく』『ひとりの意見にがっつく場面があった』などの声もいただき、鑑賞の内容に関しては課題も残すこととなりました。これらについては、今後の継続したプロジェクト展開の中で取り組んでまいりたいと思います。