11月17日(日)東京大学情報学環・福武ホールにて「アート&コミュニケーションで鍛える 先がみえない時代のサバイバル術」と題したセミナーを行いました。
おかげさまで、本セミナーは満員御礼となり、全国各地から美術関係者だけではなく、ビジネスマン、教育関係者など約160名の多様な方々に足を運んでいただきました。
当日は、センター長である福による基調講演や作品鑑賞のほか、研究員である伊達によるワークショップを行い、総合司会として共同研究者である平野智紀氏にもご登壇いただきました。
「社会的にはAIブーム。ビジネスパーソンがAIに仕事を奪われるという話もあり、ロボットに負けない感性を育てることが大切だと言われています。学習指導要領でも、ロボットやAIに負けない子どもたちを育てるように『主体的、対話的で深い学び』があげられています。芸術・文化への期待が高まる一方で風当たりも強まっている、こうした時代の中で我々が生き残る方法や技術をこのセミナーでは「サバイバル術」と呼んでいます。」
こうした平野氏の挨拶から始まった今回のセミナーでは、まず、福による基調講演がありました。
「今回のセミナーを告知してくれたひとりの卒業生が、『アートでサバイバル術って突飛な印象』と書いていました。これを読んで、多くのひとにとって、アートでサバイバルというのは突飛なのだと再確認させてもらいました。今日の私の話を聞き終わったあとには突飛ではない、という印象を皆様に持っていただくことが私の課題のひとつなんだと思っています」。そう述べた福は、講演の中で、対話型鑑賞とは何か、対話型鑑賞を介してどういったことが得られるのか、対話型鑑賞におけるファシリテーターの役割などを対話型鑑賞の実例を交えながら話していきました。
また、後半では実際にACOPを経験した学生の言葉を紹介し、彼らがいかにACOPを介して学び、生きる力を身につけていったのかという話もあり、「アートでサバイバル術って突飛な印象」から、アートを介してコミュニケーション教育ができるということも知っていただけたのではないでしょうか。
伊達によるワークショップでは、ペアになって目隠しをした相手に言葉だけで作品を伝えるブラインド・トークを行いました。振り返りとして、うまくいった理由やいかなかった理由、そこから得られるコツなどを全体で共有しました。「伝えきれていない部分があるので、モヤモヤするところや分からないところをお互いに質問し合えばよかった」「聴き手も自分の持っているイメージにとらわれず、話し手の情報から客観的な事実を集める必要がある」など、普段のコミュニケーションに通ずるコツが取り出せていたようです。
その後、福のナビゲイションによる作品鑑賞を行いました。鑑賞の途中では福から「ひとつの意見に惑わされちゃダメ。自分で根拠を考える必要があります」という話もあり、自分がその解釈に至った根拠を探しながらみるという体験をしていただけたかと思います。
最後の質疑応答は、福、伊達、平野氏によるパネルディスカッション形式で行いました。参加者の方々がご自身の現場でどう対話型鑑賞を行えばよいのかなど具体的な質問が飛び交いました。
今回のセミナーで体験していただいたことが、ご参加いただいた方々の「サバイバル術」のひとつに繋がっていくことを願っております。
お越しいただいた皆様、本当に有難うございました。
また、本セミナーは「教育新聞(web版:2019年11月18日発行)」にも掲載されております。会員限定記事ではありますが、こちらよりご覧ください。