はなぶさ保育園年長児を対象にした対話型鑑賞も今回で最後です。
今までの集大成として、会場をいつもの園ホールから滋賀県立近代美術館に移して実践しました。
その目的は、実際の作品で鑑賞することと、美術館という場所にくれば、いつでもアート作品に出会えるということを知ってもらうことです。子どもたちのヴィジュアル・リテラシーを育むという意味では、いつものプロジェクター投影でも充分です。今回の試みは、園児たちに新たな鑑賞体験を提供することと、その事を通して、アートファン(美術館来館者)の裾野をひろげたいという思いから形になりました。
鑑賞スタイルはいつもと同じ。グループで作品を前にして、よく「みる・考える・話す・聴く」です。作品選びは新たな鑑賞体験という観点から、プロジェクター投影では難しい立体の作品。滋賀県立近代美術館にはすばらしい屋外彫刻作品が幾つかあるので、1作目はその中から選びました。
絵画の場合、10人が一度に鑑賞して細部までみれる大きさであることが重要です。また、子どもが床に座ってきちんと鑑賞できる高さに展示してあることも。その他、鑑賞者にとって馴染みのある題材であるか、物語が紡ぎやすいかという基本的な観点から2作品目を選びました。
鑑賞をしていないグループは、美術館スタッフによるアートゲームを楽しみました。全体を4グループに分け、全グループが1作品+アートゲームを体験する様にスケジュールを組みました。
当初の懸念は、いつもと環境が変わる中で、子どもたちが萎縮してしまうのではないか。逆に舞い上がってしまって、落ち着いた鑑賞ができないのではないかというものでした。結果、そんな心配は必要ありませんでした。子どもたちの順応性の高さに驚くとともに、今までやってきたことの積み重ねが、美術館での有意義な鑑賞につながったのではないかと考えています。
1年10回におよぶはなぶさ保育園での実践でしたが、園児たちからは多くの感動と発見をもらいました。詳しくは、2013年度のアート・コミュニケーションプロジェクト報告書(2014年5月末発行予定)にまとめていきたいと思います。
似たような試みをされている全国の対話型鑑賞実践者の皆さん、これからやってみたいと考えている皆さん、是非、本センターの方にお声をお寄せ下さい。アート・コミュニケーション研究センターでは、子どもに向けた対話型鑑賞の可能性を今後も探り続けたいと考えています。