広く深い教養を持ったグローバル博士人材の養成に取り組む、東京農工大学リーディング大学院プログラムの秋講座、「観察力を養う~実践美術鑑賞~」に、本センターの福、岡崎が登壇し、講義とワークショップを行いました。
教養を習得することが、農学・工学分野の研究における発想力、表現力、創造性を向上させると同時に、社会や他者に対する理解と交流を助ける、人間力の向上に重要な役割を果たすとの考えのもと、鑑賞教育を専門とする福が招かれました。
講義では、「芸術も科学も、ヒトの有りようと、そのヒトが生きる不思議に取り組もうとしている点では共通する」「美術鑑賞とは知的探究心を刺激し、目的意識をもった観察力や、問題解決能力を養うもの」など、アートと科学の接点を示しました。そして講義に加えて、みることをトレーニングするワークショップと2作の作品鑑賞を行い、1日をかけて「みる」「アートとコミュニケーション」について理解を促しました。
最後は福の、鑑賞でも科学でもひとつの正解にとらわれず、多様な声を受け容れつなげることによって、シナジー効果や新たな発見が生み出せるのでは、という言葉で1日のプログラムを終えました。当日のレポートはコチラ
以下、ご参加いただいた学生のお声を一部ご紹介します。
*アートをただ見てるだけでなく、コミュニケーションの媒体として使うことができるということを身をもって経験した。ブラインドトーク・ACOPともに、普段意識していなかった言葉による伝え方、言葉の使い方、観察力を認識させられた。シナジー効果、多様性を活かす、言語的・論理的・批判的コミュニケーション力という講師の先生のキーワードがACOPの特徴を的確に表していて印象的だった。
*作品についての知識をもった上で鑑賞し、何かしら共感したり、作者の思いを馳せるのが美術鑑賞の楽しみ方だと思っていた。しかし本講座でのACOP実践を通じて、何も知らなくても楽しむ方法があるのだとわかった。皆で絵の考察を進めていくことは楽しかったし、未知への考察という点で確かに科学と楽しみ方は共通していると思った。
*美術史に頼ることなく、アートを見るACOPという体験は非常に刺激的だった。対象を「みる」行為はアート以外にも活かすことのできる「才能」ではなく「能力」であると感じた。訓練によりきたえられる「能力」をどこか「感性」ではないかと考えてしまっていたアートから教えられたのは感動的だった。
*芸術鑑賞は感覚的なものだと思っていたが、本講座では直感的に感じたことを「なぜ?」と問い直すことで論理的にディスカッションが進んでいったことが面白かった。感覚に理由を探し、それを他人に伝えるという行為は私にとって新しく、難しかったが、美術に関する知識がなくてもこんなに鑑賞を楽しめるということがわかってよかった。
*ACOPのように自分の考えを論理的に説明したり、聞いたりする中で1つの方向に向かって合意をつくっていく方法は、そのまま日常に応用できる。例えば合意形成を目的とする会議や研究ディスカッションの場等では、私たちは意外と論理的にディスカッションをできていない。ACOPは芸術鑑賞でありながら、ディスカッションの練習でもあると感じた。