京都造形芸術大学では、創作活動と教育活動を両立させている13学科の学科長から、個人的な体験に基づく専門分野の話を聞くことで、学生がキャリア開発に対しての前向きな気持ち、やる気を高める「百科学」という授業を開講しています。
このたび、本センター代表であり本学アートプロデュース学科長の福のり子が「アートとコミュニケーション」をテーマに講義を行いました。
以下に、当日参加した学生の声(抜粋)を紹介します。「みること」「受け手の存在」「鑑賞すること」について、驚きや新鮮な発見が起こったことが伺えます。
■美術工芸学科
* 日本画を学んでいるだけでは、見る側のことを学ぶ、考える機会はなかった。
* 合評会、講評会を行うとき、先生からいただくコメントに私が感じていたものと異なることがあり、少し腹をたてたことがあった。でもその後で、作品を見直すと、それはさっきまで自分がおもっていたものと全く異なっていた。回りの人達から、自分が成長するための養分を知らず知らずのうちにもらっていたのだと、他者の存在をありがたく思った。
* 絵を描く技術よりも、まず、鑑賞者として見る力を身につけようと思った。
* 先生のいうように、私は作品について考えるということをしたことがありませんでした。絵の横にある説明文をみて「ふ〜」と思ってさってしまうことしかなかったように思います。今思えば、とてもかなしいことだったと思います。
* 今までしっかりと「みる」ということを考えたことがなく、今日のお話は驚きの方が大きかった。
* 展覧会はただみる行為で終わってしまい、つまらないので行きませんでした。でも、多人数で作品について言葉のキャッチボールをするのはとても面白そうなので、これなら展覧会に行きたくなりました。
* 鑑賞する能力と制作する能力はリンクしているのが面白いと思いました。
無意識を意識化することは、日頃のトレイニングによって高められるものであると分かりました。
* 自分の作品に対して、ACOP症候群になりそうなほど向き合ってこなかったことに気付いてしまって、ショックを受けました。優れた作り手になろうと思えば、優れた鑑賞者であるべきというのは当たり前です。しかし私は今までその部分をすっ飛ばして、ひたすら技術を学び、向上させることによって作り手の私を高めようとしてきました。でも今日から新しい意識の元で自分の、また他の人の作品と、そしてアート自体と向き合えるような気がして嬉しいです。
* 私は鑑賞することが苦手です。解説されるまで何にも気付けません。だから自分の作品制作もうまくいかないのだと思いました。
* 今まで美術の授業を受けてきて、確かにみることの勉強をしてこなかった。アートの大事なことはみることだなと考えさせられました。ASP以外にもみることの講義があればいいと思いました。
■キャラクターデザイン学科
* ASPって京造の学科の中で一番謎でした。何か作るというイメージはないし。
でも、芸術・アートに対して、ものを作るってイメージしかなかったことが古かったんだな〜と思いました。
* 今まで美術館に行って作品をみていた私は、みていた気になっていただけなのだと気付かされました。作品を目に映すだけではなく、脳へと運び自分で考えることで初めてアートを受信するのだと、今回の授業で、学ぶことができました。意識をもってみるということは、きっと作品だけに限らないはずです。物事に対する意識を少しずつ変えていきたいです。
■情報デザイン学科
* 「3歳から目の前にないものがみえるようになる」という話を聞きました。私はバイトで2.5〜6歳の子どもとプールに入っていますが、そのことがすごく顕 著です。3〜5歳の子はプールのなかで、サメや貝殻や宝石が見えて、それを私に伝えてくれます。2.5歳の子は、それを聴いて楽しんでいます。
* ASPが他の学科からみて何をしているのかわからないのは、見えないものを見ようとしているからだと思った。他の学科の私たちは見えたものを見たまま判断してしまう人が多いが、それはとてももったいないことなのだとあらためて思った。
* ASPとはどんなことをする学科なのか一切わかりませんでしたが、作品を紹介するうえで「受け手」として、体感する等、作品とコミュニケーションをとると いう一見難しいことをしているのだと思いました。まさに殺すも活かすも鑑賞者次第であり、さまざまな作品と何も知らない鑑賞者つなぐ役目を担うASPの可 能性は、無限大だなと思いました。
■プロダクトデザイン学科
* 以前ACOPに参加したことがある。(中略)自分の感想や思いを話すのは、やってみないうちは少しはずかしいように思うけれど、実際人に話すと、はずかしさなんてどこかへいって、もっと聴きたい!話したい!とポジティブな考えがどかどか出てきたことが思い出された。今年も行こうと思います。
* 今度鑑賞会に行きます。ACOP症候群になってみたいです。
■空間演出デザイン学科
* モノをつくるのに大切な、他者からの目を知ることは大切だと思いました。
* よく、恋人には同じ価値観の人がいいと言いますが私はそうは思いません。ちがうからこそ、ぶつかり合い、そしてそれが分かり合えたとき、さらに愛が深まると思います。これは恋人だけではなく、友人や家族にも言えることだと思いました。
* 一見ただの景色、いつもと同じ景色に見えるものが、すこしだけでも「みる」ということに注目することで、全然違う見方ができる。もっと面白くなる。新しい 発見ができる。「みる」という行為によって生み出される様々な可能性があることを知れたので、「みる」ことをしっかりとしていきたい。
■環境デザイン学科
* 物事を見るとき、自分の直感で感じたものだけを信じきるのではなく、様々な視点から物事をみると、もっと多くの解釈が出るので、他人の気持ちに共感できたり、より面白く生きられるなあと思いました。
■映画学科
* ASPが具体的にどういう勉強をするのか知らなかったので、作品を鑑賞し、研究し、伝えていくという訓練をしていると知って驚いたし、それを勉強している人達がいることがすごいと思った。
* ACOP受けてみたいです。自分の考えや、人の考えを考えたり聴いたりすることで、新しい扉が開けそうだなと思います。
* 見ることは本当に大事。でも、今まで色々な世界をみてきたけれど、今思えば、答えを求めて、自分で考えることをしてこなかったなあと思った。
■舞台芸術学科
* 福さんとは、先生と生徒という立場でなく出会いたかった。
* アートはアートだけじゃなく、生き方にも関わってくるんだなあと、実感しました。