埼玉県では、「哲学・文学・絵画・彫刻等の一流の作品について、対話や身体表現を通して理解を進めさせたり、それぞれの分野の第一人者との交流を通して生徒の視野を広げさせたりする」ことを趣旨として、県内指定校に在籍する高校生を対象に「世界の哲学・芸術文化アカデミー」と題した様々なセミナーを行っている。
その一貫として、埼玉県立近代美術館にて開催された対話型鑑賞セミナーに、本センターから福・北野が講師として参加した。「作品・他者とのコミュニケーション」をテーマとし、福によるレクチャーの後、2つの作品をACOPにて鑑賞。受講した17名の高校生たちは非常に意欲が高く、積極的に学びを得ようとしてくれていた。以下に、高校生の感想を紹介する。
「いままで絵画をみたときに、『この画家は何を伝えたかったんだろう』と、答えを探すことしか考えていませんでした。今日のセミナーを受けて、その答えは誰にもわからないし、自分なりの解釈で良いんだということがわかり、視野が広がった気がします」
「見ているこちらがどう見るかで、『ただの絵』で終わるか、もっと魅力のつまったものになるかが決まるんだなと思いました」
「自分の作った作品もACOPできるので、今後の作品づくりに活かしたい」
「ものについて分かった気になっている自分がとてもこわいと思いました。まだ何も知らないという楽しいことが身の回りにあふれているので、たくさんの未知を味わって楽しんでいきたいです」
「私は『正解しなきゃダメ』という雰囲気に満ちた授業が好きではありません。それに対して(……)他者と意見交換した今回の授業は『探求』しているみたいで、飽きることなく絵を見続けることができました」
アートとの接し方から、自分自身が制作する場面、さらには日常の生活や学びの在り方まで、広く深い視点で高校生たちはセミナーを受講してくれたようである。昨年度の伊達に続き、2回目の参加となる本セミナー、さらなる深まりをもって継続的に実施することができれば幸いである。