ミモカ・アートカードは、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(通称:ミモカ)の鑑賞学習教材です。このカードの開発に、2007年度ASP学科卒業生の増田真理子さんが携わりました。増田さんは現在、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館の学芸員補助として、ワークショップや鑑賞プログラムの提案、サポートなどを行っています。このカードは、猪熊弦一郎の作品を多くの人に知ってもらうこと、そしてゲームを通して作品の様々な見方を楽しく発見することを主な目的として作られました。学校や施設への貸出しを行っており、全国の学校・施設団体はどこでも無料で貸りることができます。(最大4週間まで)
ミモカのロゴが大きくデザインされたボックスのなかには、猪熊弦一郎の作品がプリントされたアートカード(60枚)、「ぱかぱか」「ぎらぎら」などの言葉が書かれた音カード(60枚)の2種類のカードが入っています。そしてガイドブックには2種類のカードを使った11種類のゲームの遊び方と授業などで使えるワークシートが載っています。ゲームは4つのテーマ(A共通点を見つけよう!B言葉を使って遊ぼう!Cテーマにそって考えよう!Dチャレンジしよう!)に分かれており、それぞれの遊び方には、そのゲームを行うことで身に付く力(観察する力、表現力、想像・構成する力など)が表記してあります。ゲームの内容は、ランダムに引いた音カードの音に自分がぴったりだと思うアートカードを探し、なぜその絵を選んだのかを言葉で皆に説明する”ぽんぽんあわせゲーム”、3枚程度のアートカードを使って自由に話をつくる”お話をつくろう”など、一つの正解や固いルールが定められていない、自由な関わりが可能なものばかりです。もちろん、この遊び方以外にも自分たちで自由にゲームを作ることもできます。
実際にカードで遊んでみると、子どもだけが楽しいゲームじゃない、ということが分かります。このカードで遊んでいると、知らず知らずのうちに、作品をしっかり見て、考えるということをしています。真剣に考えて悩みながら、一緒にゲームをしたメンバー全員(みんな大人)がいつの間にか夢中になって遊んでいました。
このカードゲームでは、百人一首のように、記憶力や知識、瞬発力はほとんど必要ありません。それよりも大事なのは、(作品を)よく観察して、自分の頭で考えて、自分の考えを言葉によって表現して、そして人の意見を聞くという力です。つまり言葉を扱えるようになる幼少の子どもから遊ぶことができ、それと同時に大人にも簡単すぎることなく、十分に刺激的なカードゲームだと思います。また、このカードゲームには正解がありません。ジャッジしたりOKを出したりするのは、一緒に遊んでいる皆です。遊びながら鑑賞を行い、それを通して皆とコミュニケーションがとれる。さらに自分とは違う様々な見方を知ることができる。それもこのゲームの面白い特徴です。
さらに猪熊弦一郎の作品には、みる人の想像力を刺激するような、不思議でユーモラスなものが多くあります。まるでおもちゃ箱をひっくり返したように、カラフルな色と様々なカタチがちりばめられた作品や、人の顔や鳥の形が繰り返し連続して描かれている作品、○や×、長方形やはしごなど、色々な形がたくさん描かれている作品など、自由に物語を想像したり、自分の好みの色やカタチを見つけたり音を連想したりするのに、猪熊の作品はぴったりだと思います。またアートカードにはそのような作品群の他にも、猪熊の初期の具象的な作品も含まれています。猪熊弦一郎の画風の変化や、ずっとこだわっているモチーフ、多く使われている色やカタチなど、作品を見れば見るほど、彼の絵から色々な発見ができるのではないかと思います。アートカードを見るだけでも、十分楽しめそうです。
現在、猪熊弦一郎現代美術館では、「ミカタノミカタ−絵を楽しむ11のヒント」という展覧会が開催されています。この展覧会にも、本学卒業生の増田さんが大きく関わっています。この展覧会では、多くの方にもっと鑑賞を楽しんでもらえるように、自分だけの不思議のタネを見つけられるように、絵を見るための11のヒントを提案しています。展覧会は2010年7月4日(日)まで開催中です。ワクワクしたり、ドキドキしたり、何でだろう?と不思議に思ったり。絵をみて、自分のなかで起こる心の様々な動きにじっくりと向き合うことで、それまで知らなかった自分や様々な見方に出会えるかもしれません。ここで紹介したアートカードやミモカでの展覧会には、そのような、作品との自分なりの関わり方のヒントがたくさん詰まっているのではないかと思います。興味を持った方は、ぜひHPにアクセスしてみてください。 → http://www.mimoca.org/
文責:渡川智子